「デザインの伝え方」を読んでみた

LEAN UXの監修などもされている坂田さんが、監修で関わっている書籍です。
坂田さん献本頂きありがとうございました!

デザイナーであれば、ビジュアルデザイン、UIデザイン、UXデザインを問わず、デザインの説明に苦労したり、鶴の一声で内容が覆ったという経験があるのではないでしょうか。
本書はそんな説明に苦労するデザイナー向けに書かれている一冊で、受託やデザインを学んでいる人にとっては実務を行う上での必読書かもしれません。
もちろん事業会社であっても、ステークホルダーや役員への説明の機会が求められることもあるでしょうし、他のケースや、会議での解決策の幅を学ぶ意味でもオススメできる書籍です。

デザイナーはコミュニケーター

専門家でもない人が専門家の仕事に意見する権限を持つ――これは現代の組織において、デザイン意外の分野ではほぼあり得ない現象です。

たしかに、エンジニアリングの領域などに比べ、特にデザイン領域では具体的に目にするものだからこそ、多くの人が意見を出すことができます。
これはフラットな組織として考えれば良いことのようでもあり、しかし一歩間違えると同じ説明を何度も行わないと承認が降りない…などの負の側面もあるのではないでしょうか。
しかし、デザイナー案が最高の選択肢でないことも、可能性としては十分あり得ますし、ステークホルダーやリーダーは、責任を負うからこそ発言することも忘れてはいけません。

それに対して本書ではプロジェクトの開始前から実際の説明の際のファシリテーション、その後のフォローアップまで主にコミュニケーションに焦点を当てて書かれています。
デザイナーは普段ユーザーに対してコミュニケーション設計を行っていますが、それをステークホルダーに対しても設計すると考えるとわかりやすいのかもしれません。
デザインの専門知識の無い人に対しての説明は、一見無駄なコストのように感じられるのかもしれませんが、説明するコスト < 作り直すコスト と考えると、当たり前かもしれませんが、ステークホルダーへのコミュニケーションまでもデザイン業務と捉え、設計する必要があります。

  • 「ステークホルダーも人間」という認識を持つ
  • 体験を共有する
  • 私的な関心事も参考にする
  • 役割に対する理解
  • よい関係の構築

デザインの説明の場での質問と傾聴

我々デザイナーにとってはまさにコミュニケーション能力の見せ所なのですが、まず求められるのは「伝える力」ではなく、「聴く力です」
(中略)聴くこと、傾聴、すなわり「注意を払い関心を持って相手の話に耳を傾けること」の目的は、自分が反応する前に相手が話したいこと、伝えたがっていることを理解することなのです。

これはユーザー調査のインタビューで、ユーザーの言葉をそのまま受け入れるのではなく、その背景を探ることに似ています。
その理由は単に好みの場合もあれば、技術的な側面を理解していなかったり、OSのガイドラインを読んでいない場合、あまり言い方はよくないかもしれませんが、社内政治が関係しているなど、デザインの意見の裏側には何かしらの理由があるでしょう。
また逆に、理解が少ないからこそ、想定していないような貴重な意見を貰えることもあるため、ステークホルダーの発言を否定するのではなく、よく聞き出した上でデザイナーの考えを述べることが大切になります。
流れとしては

  1. 「感謝→繰り返し→準備」で、自然な導入部を形成する。
  2. 問題を特定する
  3. 解決策を説明する
  4. ユーザーの気持ちになる
  5. 組織にアピールする
  6. 合意を確実に取り付ける

その際、相手の意見の表面だけではなく裏側を引き出す質問としては、下記のような例が紹介されていました。

  • どんな問題を解決しようとしているのでしょうか?
  • この方法で行った場合、どのような利点があるのでしょうか?
  • これは、このプロジェクトの目標にどんな影響を与えるでしょうか?
  • これを前にどこでご覧になりましたか?

会議直後のフォローアップ

会議中だけではなく、会議の直後もステークホルダーの本音を聞き出す重要なタイミングです。
時には全体の雰囲気のために泣く泣く賛同をした参加者や、実は発言したかったけどできなかったという人もいるかもしれません。
一回だけの会議であれば、それでもいいのかもしれませんが、今後も会議で顔を合わせるステークホルダーであれば、良い関係性を保ちたいものです。
また、

  • 会議の直後は、出席者から本音を引き出す絶好のチャンス。
  • 間をおかずにフォローアップすれば、緊急性、出席者に対する敬意、デザイナー側の固い意思を伝えられる
  • 今後の対応が不要であることが明白な無用の情報や提案はフォローアップの議事録には載せない。
  • 会議の終了後も残って出席者と雑談する(土壇場で指示を取り付けられることもある)。他の部署の人や他チームのメンバーなどさらなる支援者になってくれそうな人がいれば、その人のデスクのところまで送っていきながら話すなどの工夫も効果的。
  • 「決定」に持ち込めなかった事項については、自分なりに「仮の決定」を下してチーム全体に知らせる。これが議論の呼び水になることもあるし、これがプロジェクトを先に進めるための唯一の方法になることもある。

非デザイナーへの言葉

本書は基本的にデザイナー向けの内容ですが、デザイナーの理解のために本書を読んでくれている人に向けて、12章ではデザイナーと連携して成果を上げるための秘訣を紹介しています。

  1. 焦点を当てるべきなのは「好き嫌い」ではなく「デザインの有効性」
  2. 解決策の提案はしない
  3. 質問ならいくらでも
  4. 「自分もユーザー」という考えは捨てる
  5. 決定に関するデザイナーの説明をきちんと聴く
  6. デザイナーに決定権を委ねる
  7. 言葉遣いを丁寧に
  8. データの有無を尋ねる
  9. 事前の準備を怠らない
  10. デザイナーが成果を上げるのに必要なものを漏れ無く提供する

iPhoneなどの普及に伴い、日常生活の多くの部分にデザインが関わるようになり、デザイナーの数も数年前に比べると随分増えました。
そして日々デザインのニーズは増していき、デザイン自体の重要性やテクニックに対する記事を目にするようになりました。
しかし、どんなに素晴らしいデザインであっても、プロジェクトで多くのメンバーが関わる以上、デザイナーのエゴだけではなく、多様な意見を取り入れることや、説得する工程がなくしては、ユーザーにデザインを届けることはできません。
本書はユーザーにデザインを届ける最後の一歩の合意のために、多くの事例を元に学ぶことができる書籍です。
受託だけでなく、事業会社で多くのステークホルダーと関わっているデザイナーの方にも、是非読んで欲しい一冊です。

デザインの伝え方
デザインの伝え方
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tomohiro.suzuki

株式会社スタンダード UXデザイナー。最近よく読む書籍の分野は戦略、統計学、組織論など。好きな漫画は3月のライオンとワールドトリガー。趣味は塩分摂取とアルコール。