「Web制作者のためのUXデザインをはじめる本」を読んでみた

本書はデジタルマーケティング支援を行う株式会社アイ・エム・ジェイの経験豊富な執筆陣によって書かれた書籍で、ポイントを抑えながらUXデザインと、その導入について学べる一冊です。
ご献本頂きました、株式会社アイ・エム・ジェイ様ありがとうございました。

本書で紹介されている内容は、株式会社アイ・エム・ジェイ、株式会社GMO様とSTANDARDの共同で開催させて頂いたイベント「ワイワイカフェ」のワークショップで実施した内容も含まれていますので、イベントに参加された方は復習も兼ねて是非読んでみてください。

Web制作者のためのUXデザインをはじめる本 ユーザビリティ評価からカスタマージャーニーマップまで
玉飼 真一 村上 竜介 佐藤 哲 太田 文明 常盤 晋作 株式会社アイ・エム・ジェイ
翔泳社
売り上げランキング: 4,510

体験のデザインって、こういうことか! 8ステップではじめるWebのUXデザイン! 本書は、実際に大手デジタルマーケティング会社でUXデザインを実践してきた執筆陣が、Web制作者が知っておくべき、UXデザインの「基本」から「ユーザビリティ評価」「プロトタイピング」「構造化シナリオ」「ユーザー調査」「カスタマージャーニーマップ」「ユーザーモデリング」「組織導入」までを…Amazon.co.jpで続きを見る
引用:Web制作者のためのUXデザインをはじめる本 内容紹介より

想定読者

UXデザインをはじめる本のペルソナ 白石由香

ペルソナ:白石由香(27歳/女性)

  • Web制作を受託している十数名規模の会社のWebデザイナー
  • 最近UXデザインに興味を持ち始めて情報収集を始めた
  • 画面を作り、デザインし、HTMLマークアップや顧客対応など比較的幅広く業務をこなしている

本書では執筆活動自体に、UXデザインのプロセスが活用されています。
上記はこの本の想定読者のペルソナ像で、実際のユーザー調査に基づき、本書で紹介されている共感ペルソナという記法にまとめられています。
ちなみにこちらのペルソナは、ワイワイカフェのイベント参加者のペルソナとしても活用されています。

ペルソナは受託のデザイナーとなっており、実際に本書では受託のプロジェクトでのメンバー構成や、UXデザインを行う際の工数が記載されていますが、事業会社の人でも参考になるように書かれています。

目次

本書は以下の章で構成されて、UXデザインのプロセス全体について学べる内容となっています。
また、それぞれの章ではより専門的に書かれている書籍についての紹介も載っており、より深く学びたい人でも活用できるようになっています。

1章 UXデザインとは?

1章ではUXデザインの定義について紹介されており、よく混同されがちなUIとの違いや、UXっぽい文脈で語られがちなユーザビリティとの違いなどについて紹介されています。
また、実際のプロジェクトでUXデザインを導入する時に起こりがちな「今さら問題」や、大規模な組織、または受発注関係によくある「持ち場を守れよ、超えるな問題」など、リアルな障壁にも触れられています。

1章での注目のポイント

  • UI、UX、ユーザビリティ(P13)
  • 参加するタイミングでは既にプロジェクトの枠組みが決まっていて、新しい取り組みをやりづらい(P16)
  • あなたの職種や役割を越えてしまう、相手の役割を越えてしまう(P17)
  • UXデザインの手をつけやすい領域とは?(P19)
  • ユーザーの本質的な欲求まで探求しないのはあり?(P21)

2章 ユーザビリティ評価からはじめる

2章では既にサービスやサイトがある場合に、UXデザインの導入として取り組みやすいユーザビリティ評価について書かれています。
基本的な効果、効率、満足などのユーザビリティの概念から、実際にユーザビリティ評価を行うまでの準備を含めたプロセスや機材、ユーザビリティ評価時のアウトプットのイメージまでを紹介しています。
また、実際のユーザーに対して実施するユーザビリティテストだけではなく、専門家によるヒューリスティック評価や、熟練者と初級者のギャップから定量化するNEMなどの評価方法についても書かれています。

2章以降からは、ちょっと贅沢すぎる環境な気もしますが、プロジェクトで各UXデザインのプロセスを実施する際の期間や工数、メンバーの体制などについても紹介されているので、これから導入する際の参考になるのではないでしょうか。

2章での注目のポイント

  • Webではユーザビリティ評価のチャンスは多い(P29)
  • 問題の重さ(P48)
  • 問題の解決優先度(P49)
  • 定量的に分析できる評価手法(P53)

2章で紹介されている書籍

3章 プロトタイピングで設計を練りあげる

3章では主に設計段階で使われるプロトタイピングの一種であるペーパープロトタイピングや、オズの魔法使いによるワイヤーフレームの評価について書かれています。
また、近年のツールの普及により発生する、プロトタイプの「作り込み過ぎ」問題への注意などについても触れられています。

3章での注目のポイント

  • プロトタイピングの種類(P64)
  • なぜ紙で作るのか(P68)
  • プロトタイピングを実施する際の注意点(P72)

4章 ペルソナから画面までをシナリオで繋ぐ

4章ではプロトタイピングの前に行う、構造化シナリオ法について書かれており、それぞれ「価値のシナリオ」「行動のシナリオ」「操作のシナリオ」(バリューシナリオ、アクティビティシナリオ、インタラクションシナリオ)ごとに、実際のシナリオ例を元に紹介されています。
また、構造化シナリオ法のツールキットとして、Webからダウンロードできる簡易版テンプレートも掲載されています。

4章での注目のポイント

  • こういうペルソナはやめよう(P83)
  • Webサイト運営側が考えるシナリオには注意する(P84)
  • ユーザーが目的達成したいコトの本質を見据える(P84)

4章で紹介されている書籍

5章 ユーザー調査を行う

5章では4章での構造化シナリオを書くために必要な、ユーザーの価値や行動について理解するためのユーザー調査の方法の中から、ユーザーインタビューについて紹介しています。
また、インタビューを行うだけではなく、調査から得られたデータの分析を行うための分析手法として、親和図法についても書かれています。
親和図法はただの分類法に見えたり、簡単に見られがちなのですが、実際には新しい発見を得るための発想法であり、その中でも重要な切片の書き方や、役に立つ表札の書き方などが紹介されていてオススメです。

5章での注目のポイント

  • 「感情曲線インタビュー」で思い出話を聴いてみよう(P105)
  • ユーザーのいいなりでいいの?(P112)
  • ユーザーも気づいていない「本当の解決策」を探ろう(P113)
  • 実際に定性データを触って、手を動かしながら考えてみよう(P115)
  • ちょっとしたコツ「分析上手は動かし上手」(P120)

5章で紹介されている書籍

6章 カスタマージャーにマップで顧客体験を可視化する

6章ではWebサイト内だけではなく、現状の顧客体験全体を可視化し、サービスの課題や新しいヒントを得るための手法としてAs-Is型のカスタマージャーニーマップについて紹介されています。
カスタマージャーニーマップについては個人で行うのではなく、ワークショップ形式で行うことのメリットなどについても紹介されています。
また、Webからダウンロードできる、カスタマージャーニーマップの清書用のテンプレートも掲載されています。

6章での注目のポイント

  • Webサイトありきでユーザーは行動していない(P130)
  • 複数人のワークショップ形式で考えよう(P134)

7章 共感ペルソナによるユーザーモデリング

7章ではプロジェクトメンバーに、具体的なユーザーを理解してもらうための方法として、共感ペルソナという記法でのペルソナ作成法について紹介しています。
共感ペルソナは、冒頭で紹介した本書のペルソナを表すためにも使われている記法で、実際の調査データを元に以下のエリアごとに情報を配置していくのが特徴です。

  • 見えているもの(SEEING)
  • 言っていること(SAYING)
  • していること(DOING)
  • 感じていること(FEELING)
  • 聞こえているもの(HEARING)
  • 考えていること(THINKING)

7章での注目のポイント

  • ユーザーモデリングという翻訳作業の重要性(P144)
  • ユーザー像ほど伝わりにくいものはない(P144)
  • プロジェクトの目的や調査テーマとの関連性が明白になっているか?(P148)
  • ペルソナの未来像が予想できると更におもしろい!(P149)

7章で紹介されている書籍

8章 UXデザインを組織に導入する

8章では、これまでの内容を踏まえ、自分たちの組織の関係者にUXデザインを知ってもらい同意を取り付け、導入するための活動について書かれています。
UXデザインの導入が完了するまでのそれぞれのステージや、その間に存在するハードル、ステークホルダーの違いを理解し、導入のためのアクションプランに落とし込むところまで紹介されています。
基本はボトムアップ型での導入を想定していますが、トップダウン型での導入を考えている人であっても、参考にできる内容のはずです。

8章での注目のポイント

  • 導入活動の進め方(P154)
  • UXデザインステージ(P156)
  • UXデザイン導入シナリオの使い方(P170)

一般的なUXデザイン関連の書籍であれば、ユーザー調査から順番に書かれていき、最後は評価で終わることが多いのですが、本書で注目したいのは、最初からユーザビリティ評価について書かれている点です。
リアルな現場では、これからUXデザインを導入しようという時に、UXデザインの経験の少ないメンバーでいきなりユーザー調査を行うと、有効な情報を得られなかった等の理由で躓きやすいものです。
しかし、ユーザビリティ評価はUXデザインの初級者が多い環境でも、それなりに成果を得やすく、確かに導入のきっかけとして適しているプロセスでもあります。
そういった点で、本書はリアルな現場でもUXデザインを単なる理想論で終わらせず、成果を出すために活用できる一冊としてオススメできる書籍です。

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玉飼 真一 村上 竜介 佐藤 哲 太田 文明 常盤 晋作 株式会社アイ・エム・ジェイ
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tomohiro.suzuki

株式会社スタンダード UXデザイナー。最近よく読む書籍の分野は戦略、統計学、組織論など。好きな漫画は3月のライオンとワールドトリガー。趣味は塩分摂取とアルコール。