2014.7.24 / Report

モノづくりのサイクルから学ぶ、サービス・アプリデザインに必要な4つのゴールとは

Kenichi Suzuki

VisionMobileの2014年Q3の報告書「Developer Economics」によると、1か月に5000万円以上を売り上げるデベロッパは全デベロッパの1.6%にすぎず、この1.6%が、残る98.4%の合計稼ぎ高の数倍を稼いでおり、50%のデベロッパは月の売り上げが1万円にも見たない状態だと述べています。iOS/Androidの台頭により個人や企業がアプリケーションを開発する事が身近になったように感じます。次々と新しいアプリがリリースされているにも関わらずこのような状況になっているのは何故なのでしょうか?

そこでは、事業の存続可能性をどう担保していくか?が重要な要因となってくるというものでした。今回は、7/23に開かれたUIデザイン会社グッドパッチのUXデザイナー藤井さんの勉強会から学ばせて頂いた、利用者に価値を提供でき、かつ事業として存続できるプロダクトに必要な4つのゴールをご紹介します。


モノづくりには4つのゴールがある

アプリやサービスを作る際、私たちは何をゴールとしているでしょうか?UIデザイナーであれば、プロダクトを設計してビジュアルデザインをし、世の中にリリースすることでしょうか?UXデザイナーであれば、プロダクトの利用者に対して任意の体験を通して価値を感じてもらうことでしょうか?事業責任者であれば、そのプロダクトを通して企業にとって安定した収益を生み出せることでしょうか?

ここでは、ものづくりには4つの達成すべきゴールがあるとし、このうちのどれが欠けても成立しないとしています。

何故これらのいずれかが欠けてはいけないのでしょうか?

アプリとして形になればそれで大丈夫?

このケースで考えられるのは、アプリやサービスのリリース自体が目的になってしまっているプロジェクトです。「こんなアプリが作りたい」というアイデアが先行し、リリースしたものの、思ったように使ってもらえずに人知れず幕を下ろすパターンです。前衛的な表現手法やリッチなビジュアルありきで進み、実際に使ってみたら使いにくいものになってしまった・・というようなユーザビリティ上の問題もここでは発生します。もちろん、利用者にどのような体験をさせたいか?という軸からプロダクトを設計し、テストしながらブラッシュアップしていくことで利用者に価値を提供できるプロダクトにすることができます。

価値のある体験を提供できればそれで充分?

ではプロダクトがターゲットとすべき利用者を絞り、その人が抱えている課題を解決できるような価値を提供できるアプリが作れた場合はどうでしょうか?この場合、ターゲットとするユーザーに届けることが出来れば、その人はアプリの熱狂的なユーザーになることが想定できます。自分が悩んでいた、困っていたことをたった1つのアプリが解決してくれた時の嬉しさや喜びは私たちUIデザインを提供するデザイナーにとっても非常に嬉しく感じることで、プロジェクトチームが揃って「いい仕事だった」と言い合えるものになるのではと感じます。しかし、事業としてアプリを提供し続けていく以上、その事業を存続できるだけの資産や収益化のための実現方法が検討されていなければ、いつかそのアプリは提供できなくなるか、利用者に対して何のサポートや保証もできなくなるものになってしまいます。

事業として収益が生めれば問題ない?

では事業を継続できる収益を生めればいいのでしょうか?ユーザーに継続利用を促し、あらゆる課金施策を駆使して安定した収益が生み出せるアプリは企業の土台を支えてくれる事業になりうるかもしれません。少ない人数でミニマムな運用をしながら、ほぼ何もしないで収益を生み続けられる事業を作れるのであれば企業にとってそれ以上にいいものは無いように思えます。しかし、私たちは収益を生みたいからそのアプリを作ったのでしょうか?企業または個人として、対象とする利用者に対して、このアプリを通してどのような働きかけをしたいか?というプロジェクトのミッションが問われるものになるのではと考えています。

では、利用者に価値を提供し、事業を存続させるために、私たちはどのようにプロダクトをデザインしていくべきでしょうか?


モノづくりのサイクル全体をデザインしよう

ここでは例として、UXをゴールとした場合のデザイン方法を述べられていました。

まずアプリはどんなユーザー体験を提供できるかを定めます。
ここでは、アカデミックな解釈でのUXとなる予期的、一時的、エピソード的、累積的それぞれのUXのうち、サイクルの設計に適しているもの(ユーザー行動のトリガーとなるもの)をピックアップして設定します。

Action×ActionによってUXをデザインする

次に、プロダクトが提供できるアクション(予測できるもの、実際に出来ること、アクションしたことによる結果)と、それによってユーザーができるアクション(継続利用、購入、紹介、登録 etc)を設定し、プロダクト利用時の体験を設計していきます。

これが初期開発時にアプリが提供できる価値とそれにより起こる行動の仮説(このプロダクトを通して、この体験をし、価値を感じたのなら、ユーザーはこんな行動をするだろうのようなもの)となります。リーンスタートアップ式のプロジェクトでは、この体験の結果となる「ユーザーの行動」をKPIとし、計測可能なものとすることで仮説の効果を検証しながら事業の方向性や成否を判断していく方法をとっています。どんな行動を計測するか?どのように計測するか?を予め決めた上でリリースする事が重要です。

事業が存続できるかどうか確認する

最後に、設定したユーザー行動があることにより、その事業が存続していける可能性があるかを確認します。そのため、設定・計測するユーザーの行動は、事業の存続可能性を作るものでなければなりません。そこで存続可能性が低い場合、ユーザーにとらせる行動を最適化をします。これはアプリ内の導線や掲載するコミュニケーション等のテストを通じて改善できることが見込めます。
それでも存続できない可能性がある場合、ユーザーの体験も最適化し、存続できる体験と体験後の行動を設計します。ここで気をつけるべきなのは事業の存続可能性を担保することが目的になり、ユーザーに提供する体験を犠牲にしてはいけないということです。今回私たちは目的とするユーザー体験を提供することにフォーカスしているため、事業サイドからの巻き戻しの結果、ゴールとしていた体験が生み出せないのであれば、存続可能性を踏まえ、事業存続と価値提供を両立できるユーザー体験、ユーザー行動とは何かを探りながら最適な方法を見つけていくべきです。


プロダクトとして効果があり、利用者が価値を感じ、企業も存続できる設計に

このようなサイクルを取り入れることで、利用者にとって価値となる体験を実現できるプロダクトとしての品質を担保し、価値を感じてくれた利用者による行動を通して、事業として存続可能なプロダクトを設計することが可能になります。私たちが普段好んで利用しているサービスには、実は自分たちが便利になるだけでなく、それによって提供する企業が存続していけるような構造で設計されているものが多いのではないでしょうか。

ワークショップを通して実践する

この勉強会の後には、グッドパッチさんが提供するプロトタイピングツールProttを題材にし、モノづくりのプロセスをあてはめて考えるワークショップが開催されました。

ワークショップを通して具体的に機能や体験、計測すべき行動を考えてみることで、実際に事業として存続できる可能性があるのか?をリアルに検討できるようになるため、身近なサービスにあてはめて実践を繰り返すことでスムーズな設計が出来るようになるのではと感じました。
冒頭では、Prottのデザインを担当されている小林さんからサービスの実践や実際に使っている方へのインタビューがあり、ユーザーの体験から意図した行動が生み出せているか?また生み出せていないのであればその理由は何か?という学びに繋げる取り組みがされており、このやりとり自体も学びになるものでした。Prott自体も、このような機会やFacebookにてProttユーザーグループなどを設け、ユーザーと一緒に作り上げていくような文化になっていて、一人の使い手としてこれからの動向がとても楽しみです。

まとめ

アプリやサービスを作るプロジェクトではアイデア先行やまずはどのように収益化するか?という話から始まってしまうものも少なくありません。そのようなケースになった時に、改めて自分たちが重要視するゴールを起点として、全てのゴールのサイクルを関連付けられる設計をすることで、制作者、利用者双方に便益をもたらせるプロダクトを作ることが可能になると考えました。価値と収益は表裏一体であって別々の話ではなく、価値を提供できるから収益になる、同じことを違う立場から話しているだけ、という、聞いている分にはあたりまえの事ですが実現が難しい事を改めて学べる会となりました。

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