2014.8.1 / Report

Design dot BEENOS vol.2参加レポート

Tomohiro Suzuki

Design dot BEENOS vol.2に参加してきました。
今回で2回目となるこのイベントは、ゲストとしてCoineyの松本さんをお呼びして開催されました。
まずゲストの松本さんからは「0からつくるUX」というテーマに基づき、Coineyに入ってからら現在までにどのようなデザインをやってきたかについてを、ご自身の体験からお話をいただきました。その後、トークセッションという形で山本さん、坂田さんが加わりCoineyでの取り組みをさらに言及や発展させたお話を聞くことができました。

Coiney(コイニー)- お店のカード決済をスマホでかんたんに

1,スタートアップにおけるブランド体験

Coineyに入った当初、まだなにもない状態でしたが、創業者のビジョンは存在していました。そこで、まずはビジョンからビジュアルまで一貫した体験を作ることを目指し、ロゴの作成に取り組みました。

ビジョンをカタチにする

ビジョンとして、「いつもの日常にあるようなあたらしいスタンダードをつくること」というものがありましたが、人々の日常で使ってもらうためには親しみやすく、人間的な存在であるプロダクトにする必要がありました。ロゴにはCustomer、Coiney、Consumerという、ステークホルダーの間に入るCoineyとして、それぞれの頭文字である3つの「C」を利用しています。中心の「C」が上向きになっているのは笑顔を表していて、人間味を表しています。
ビジョンのロゴへの落としこみの次には、体験の細部までビジョンを伝えられる仕組みを作りました。例えばCoineyリーダーは丸の形をしていますが、これはデバイス的には一見非合理的な形をしています。生産の効率性を考えると基盤などの関係で四角にしたほうが良いのですが、それよりも丸という形状の持つ柔らかさや親しみといった印象を重視しています。

ユーザーとのインタラクション

他にユーザーとのコミュニケーションとして、Coineyを購入してくれた方に「はじめまして、Coineyです」といったリーフレットを作りました。少しでも人間に近い存在として使って欲しく、また決済サービスという固いイメージをもっと生活的に表したいと考えてのものです。
また、ローンチ後には購入者の方に手書きの社長メッセージを送ったり、サービスからログアウトした時のインタラクションとして「おつかれさまでした」というメッセージラベルを表示するなど、フレンドリーなコミュニケーションを行いました。私達は日々デジタルの世界で仕事をしていますが、ユーザーはむしろ現実世界で商売をしている方が対象になるため、無機質なシステマチックなものではなく、常にユーザーと近いサービスを目指しています。

機能ではなく体験を意識したブランド

UXには感覚的な価値や周辺のブランド体験が大きく影響します。ひとつの体験が損なわれると、今までに積み上げてきたものも崩れてしまうこともあるため、如何にしてがっかり体験を作らないかを考えています。そのためには全体を通して一貫した体験ができるように、コンセプトを細部まで反映させていきCoineyというブランドを作りました。このブランドへの取り組みにより、副次的効果としてコミュニケーションコストが0に近くなったことがメリットとしてあります。創業者のビジョンとデザイナー自身が同期することで無駄な作業がなくなったり、自分たちのブランドに共感してくれた人が自然と会社のメンバーとして集まるようになりました。

2,スタートアップにおけるデザインプロセス

プロトタイプ重視

基本的にプロトタイプ使ってコミュニケーションをしています。社内用になにかを見せるにしても綺麗にまとめることはその後の修正にも時間がかかり、小回りがきかなくなります。考えるよりもまずは触れたり聞いたりして判断できるものを作っていて、例えば以前に決済の後にゲームができるという案がありました。普段であればその場限りのアイデアで消えていくのかもしれませんが、ふと思い出した時に実際にゲームができるモックを自分で実装して社内チャットに投げたら、みんながそれを触ってとても面白かったということがあります。スタートアップにおいては、口やスケッチよりもプロトタイプが明確な推進力となり、プロトタイプ自体が次のプロジェクトの出発地点となります。

3,スタートアップにおけるUXデザインの文化

組織の縦と横を繋ぐ

組織の中でのデザイナーのポジションを考える上で「縦」の意思決定、「横」のチームの連携が考えられます。この縦横の交差する所に立ってコントロールするのがデザイナーです。例えば以前、実際に決済する時にカードをスワイプし、そこからカード会社に通信してカードの取引が可能であればサインに進むというプロセスに18秒もの時間がかかる問題がありました。これに対してデザイン側では通信中にアニメーションを入れる、ビジネス側ではカード会社に通信を早くするように申し入れるなどのアイデアがありましたが、最終的に解決したのはエンジニアでした。それはカード会社への通信をサインしている間に行うという処理で解決するというものでした。問題を解決するのはデザイナーのみではなく、組織全体で共有することで他の人が問題を解決してくれることもあります。

問題を共有する仕組み

問題を組織内で共有するには「みる」よりも「きく」よりも「なる」という視点を持っていて、その人自身がユーザーになることを推奨しています。自分自身がユーザーになると、ユーザーからのフィードバックを得てバグなどの問題を解決する時に比べ、はるかに問題意識を持って取り組むことができます。そのために社内の飲み物販売のスペースにCoineyを導入し、日常的に飲み物を買う度にユーザーになる仕組みを導入しました。
また、その前段階である「みる」と「きく」についても、チームメンバーはユーザーに完全になることはできないため、メンバーそれぞれが実際にユーザーにヒアリングに行くようにしています。時にはデザイナー自らメンバーを引っ張って連れて行くこともあります。

メンバーが増えた時の対応

最近ではチームのメンバーが急速に増えたこともあり、UXへの解釈も多様になってきています。以前であれば一人で全てを見ていたが、一人では無理だと感じ、意思決定となるコンセプトを再定義し、コンセプトブックというものを作り共有するようになりました。コンセプトを共有することで、自分がコントロールしなくともあらゆる部分で体験の質が保たれるようになりました。しかし、そこで多様な意見をただ抑えてしまうのではなく、ある意味自分が盲目的になってしまうことで見落としている部分もあるので、新しいデザイナーの意見を試験的に取り入れたりなど、柔軟に対応しています。

これからつくるUX

一歩先の目標と将来のビジョンを往復しながら、ひとつひとつの接点を丁寧に作っていくことが大切です。目先を追って効率を求めるだけではなく、最終的にどんなブランドに繋がるかを意識することが重要です。
例えるのであれば、デザイナーの役割としてはスタートアップという未開の土地を開拓し、ひとつの街を作ることだと思います。そのためにはまずコンセプトという旗を街の中に立て、UXファーストという土壌を作ります。そこからプロトタイプで体験という道を整え、サービスを成長させていくという循環のシステムを作ることが必要です。
スタートアップのデザイナーは開拓心を持つべきだと考えています。

Designers be Ambitious
「大志をいだき、新しい価値をつくる開拓者であれ」

トークセッション

その後、山本さん、坂田さんが加わりトークセッションという形でさらに先ほどの松本さんに言及や発展をさせた話を聞くことができました。非常に良い内容だったためいくつかを抜粋して記載させて頂きます。

効率を求めなかったこと

スタートアップであれば、通常は目先のことで手一杯になりすぐにプロダクトに関わる短期的な視点を持つことが多い中、Coineyではあえて非効率的だと思える取り組みをしていました。それはCoineyというサービスが中長期的な結果が求められるということもあり、最終的にはコンセプトを明確にし、時間をかけてブランドを高めることが効率の良い方法になることもあります。もちろん効率を求めることが悪いということではなく、様々な制限のある中で効率以外の部分も考えることが重要です。制限を特定し、制限の中で楽しむという気持ちが創造性を生み出します。

言葉の力

最近のWebのデザインでは言葉を大事にしていないと感じるものが多くあります。例えば以前であれば画像としてラベルを埋め込んでいたものを、いつでもテキストだけをコードで修正できるような実装ができるようになったことが関係しているのかもしれません。あとで変更できるから一旦このまま…というのは確かに短期的には効率よく完成に向かう術ではありますが、それは伝わりやすくするための時間を削ることにも繋がるという側面があります。人間というのは言葉を介してコミュニケーションをします。例えばサイトのトップでのファーストタイムエクスペリエンスでは0.8秒でユーザーは印象を決めます。そこでは単的に本質を表したコピーが印象に影響を与えることがあります。


まとめ

どのようにしたら良い体験を与えることができるかを追求し、プロダクトを作る元である「人」にも焦点を当て、全てにおいて伝わる仕組みを作るという松本さんの取り組みは大変素晴らしいものでした。他のスタートアップのデザイナーがプロダクトのみを作ることに集中してしまうことが多い中、その元となる部分から考えて一貫したデザインをすることのできるデザイナーというのは、今後ますます必要になっていくものです。以前から繋がりのある松本さんですが、改めてCoineyでのデザイナーとしての深い関わり方を知ることができたのは大変参考になりました。
また来月も別のゲストをお招きしてDesign dot BEENOSは開催されるとのことなので、興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか。このイベントは多くの参加者がいるイベントとは異なり、少人数だからこそより身近に話を聞くことができ、デザインに対して参加者全員で考えるという貴重な場だと思います。

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