2014.8.20 / UX

空港の待ち時間を解決したデザインへの考察

Tomohiro Suzuki

先日のユーザーが待っている間のUIデザインという記事の最後で取り上げた空港のデザイン例についての考察です。
部分的に見ればたしかに待ち時間はなくなり、待ち時間のみに対する苦情は減ったのかもしれません。しかし、空港ではお年寄りや足の不自由な人も利用する場であり、公共の機関としては一概にこの文章だけから良いデザインと判断することはできないでしょう。
今回は一人のデザイナーとして、せっかくの機会なのでこの問題に対してどのようなアプローチができるか、そしてこのデザインから考えられることはなんなのかを記述したいと思います。

前回のおさらい

まず前提としては、空港の手荷物引渡所で待ち時間がかかり、利用者からクレームが発生するという問題がありました。これに対して手荷物引渡所のスタッフを増員することで、手荷物の受け取りまでにかかる時間を8分まで短縮ができたそうですが、苦情は減りませんでした。
そこで次のアプローチとして、「手荷物引渡所までの距離を延ばし、客に空港内で長い距離を歩かせる」ということを行ったそうです。これは今まで手荷物引渡所まで1分だった距離を、6分歩くようにルートを変更したということでしょうか。その結果、待ち時間に対する苦情はほぼ0になったそうです。
つまり苦情の前提となるユーザーのストレスが溜まるのは「歩く < 待つ」場合のほうが大きかったと考えられます。 参考:UIの改悪がUXを改善させる場合

改善により発生した問題

これが若い人しか利用しない施設であれば問題ないかもしれませんが、空港という公共機関であればお年寄りや足の不自由な方も利用することになります。このような方々にとっては逆に以前の待ち時間が発生するケースの方が良く、歩かせるという方法は負担になってしまいます。
また、待ち時間に対する苦情は確かになくなったのかもしれませんが、以前の空港の構造を知っていた人や、日常的に利用する人からは逆に移動距離に対する苦情が増えた可能性もあるかもしれません。

情報理解

ここから解決策を考えるにあたり、あまりに知らない情報が多すぎるためもう少しこの空港について理解したいと思います。そもそも自分自身が海外に一度しか行ったことが無く、本来であれば実際に旅行に行く前から後までを自ら体験したり、利用者や職員にインタビューしたいところですが、ヒューストンに行けるわけでもないので今回は簡易的にネットで調べてみます。

他の解決策

理解はまだまだ浅いですが、ここから長い距離を歩かせる以外にどんな解決策があるかを考えたいと思います。理解が足りないため、実際では既に空港で実践されていることかもしれませんが、あくまでも例ということで。

1,飛行機の中で待ち時間を消化する

手荷物受取所の環境が良くないという推測の元に考えてみました。荷物が流れてくるところの目の前で待つのであれば、なかなか荷物がこないことへの不満が溜まるでしょう。それに対して、同じ待ち時間の環境を飛行機内で作ることができれば、待つ時間は少しだけ快適にしたまま、受け取りにかかる時間を短縮できるのではないかと思います。
しかし、長距離の飛行後であれば、早く降りたいという心理が働くため、やるのであれば意識させずに自然と時間を作ることが必要かもしれません。

2,荷物の受け取りまでの残り時間を表示する

先週の記事のローディングと同じで、いつ来るのかわからないのに待たされるから不満を感じるのではないかという仮説です。例えばモバイルアプリケーションで残り時間が表示されずローディングがただ10秒間回り続けていると、不満は高くなるでしょう。しかし、現在何%まで完了していて残りはどれくらいあるのかの判断ができれば、ユーザーは少し目を離して他のタスクをする等で待ち時間を消化できます。
同じように空港でも便ごとの利用者へ待ち時間を示すことができれば、少しトイレに行くことや、空港の無料のワイヤレスLANに接続してスマートフォンで時間を潰すことができるかもしれません。

実際のところ

調べている途中でわかったことですが、羽田空港には電動カートというものが存在するらしいです。あくまでも推測ですが、これがヒューストン空港のような広い空港に存在している可能性は高く、現状ではこの電動カートを使うことで伸びた移動距離に対応をしているのではないかと考えられます。しかし、これ自体も完全に解決したわけではなく、次は台数によっては乗れないということや、そもそもの存在を知らないという問題が発生することもあるかもしれませんが。
ANAシニアらくのりサービス【国内線】│航空券│ANA国内線


まとめ

ここまで書いてきましたが、空港のデザインを別の角度から見て解決策を考えることが本記事の目的ではありません。
元のUIの改悪がUXを改善させる場合という記事には多くのはてブや、Likeがついており、多くの人が参考になったかもしれませんが、デザイナーであれば前提であるターゲットや、環境の部分をもう少し意識する必要があるのではないでしょうか。否定するわけではありませんが、あくまでもひとつの手法であり、本質を理解せずに同じことを他でしても、むしろ逆効果になることもあることも考えるべきです。
そして、このような情報は私達デザイナーが親しんでいるネット上には多く存在しています。例えばUXデザインのプロセスを学ぶことも良いですが、そのプロセスがなぜ必要だったかの部分を理解せず、ただ同じように実践してもゴムのユーザーができたり、作ることが目的になったジャーニーマップなどが生まれることになります。
Googleは調べればなんでも出てくると思い込みがちですが、情報の表面だけではなく幅広い視点から物事の本質を捉えることが大切です。

お互いの学びと成長を促せるメンバーを募集しています

STANDARDは「未来の豊かさにつながる仕組みをデザインする」というミッションを元に、人の役に立つ事業やビジネス、サービスの創出や改善をデザインの力で支援し続けています。

そのために、お互いの価値観を尊重し、学習と実践と内省をしながら成長できる場所であり続けることを目指しています。

あらゆる物事の仕組みを設計するデザイナーとして、ご一緒に考えながら試行錯誤していきたいという方からのご連絡をお待ちしています。

記事一覧へ

Related Articles

About us

私たちはユーザーへの価値とビジネスの成立を実現するUXデザインを提供し、
アプリやWebサービスの新規立ち上げや改善をサポートしています。

STANDARDはUXデザインを軸に、新規事業の立ち上げや既存サービスの改善を支援するデザイン会社です。