2014.11.13 / Report

nanapi勉強会 – チームで作るデザイン / チームを作るデザイン イベントレポート

Tomohiro Suzuki

nanapiさんの主催の元、「チームで作るデザイン / チームを作るデザイン」というテーマでイベントが開催され、nanapiからはCCO/デザイナーの上谷さんとデザイナーの木村さん、BEENOSからデザインフェロー/戦略ディレクターの山本さん、Bracketからリードデザイナーの河原さん、STANDARDからはデザイナーの鈴木智大が登壇しお話をさせて頂きました。
平日まっただ中で少し渋めのテーマではありましたが、イベントページ公開後は半日経たずに定員が埋まり、皆さんチームで活動するにあたり同じような悩みを抱えているのではないかと感じました。

本記事はこのイベントのレポートとして、それぞれの登壇者の発表を簡潔にまとめたものです。

デザインのためのデザイン

上谷 真之(株式会社nanapi CCO / デザイナー)

プロダクトを作り続けていくためには、開発チーム自体を再設計する必要があるということについて、実際に上谷さんがnanapiという組織でCCOという立場からどのような取り組みをしているかについてのお話を頂きました。
特に印象に残った内容は、社内でデザイナーという言葉はどのように捉えられているかについてのアンケート結果でした。アルバイト目線ではバナーやサイトレイアウトを作る人ということだったり、エンジニアからであれば貰ったイラストを整理したり、足りないものを依頼する人というような、予想以上の認識へのギャップがありました。
これは顕著な例ですが、日常業務でもお互いに同じ言葉を使っていても全く認識がズレているままコミュニケーションをしているということになります。このまま開発を進めてしまえば、お互いの価値観が合わずにロスが発生することになるため、nanapiでは言葉の再定義ということを行い、メンバー同士の認識のズレを無くしていく取り組みを行っているとのことです。
また、最後にチームにおける良いデザイナーとして、マクロとミクロの両方の視点を移動できるプロフェッショナルだと言っていたのが非常に印象的でした。これがマクロだけではただのマネジャーで、ミクロであればグラフィックデザイナーですが、広義のデザイナー本来のデザイナーとしては両方の視点を目的に応じて切り替える必要があります。

グラフィックデザインソフトをアンインストールしよう

山本 郁也(BEENOS株式会社 デザインフェロー/戦略ディレクター)

スタートアップから大企業の支援まで、幅広い組織に関わっている山本さんからは狭義のデザインからデザインの範囲を広げるためにどうすればよいかというお話を頂きました。
現在ではインターフェイスデザイン、組織デザイン、ソーシャルデザイン、経営デザインなど多くの対象に対して使われている「デザイン」という言葉ですが、やはり日本では単独でこの言葉が使われるとグラフィックデザインを指すことになります。
しかし広義のデザイナーを目指す人はどのようにすればよいのか、、、もし広義のデザインをやりたいのだとしても、現実にグラフィックデザインの仕事の依頼が来ているのであれば、やはり周囲からは狭義のデザイナーだと認識されている自身に原因があります。
その現状を変えるための例が「グラフィックデザインソフトをアンインストールしよう」という言葉になります。これはPhotoshopやIllustratorなどのグラフィックデザインソフトを使わない時に自分はどんな価値を提供できるのかを考える必要があるということを、端的にまとめた言葉ではないかと思います。新しい領域(本来の幅広い領域に貢献するデザイン)で価値を提供したいのであれば、安全地帯にいつまでもいないで、得意な武器を手放すことではじめて見えてくるものがあるのではないかと感じました。

外部から組織に加わるデザイン

鈴木 智大(STANDARD inc. デザイナー )


※ 一部公開できない部分は隠しています。

受託として依頼され、外部の人間として組織に加わる中でどのように活動したのかを、実際のスタートアップから依頼があり参画した時の実例を元に紹介させて頂きました。
この時の依頼の表面的な部分としてはビジュアルデザインやユーザビリティの改善といったものでしたが、その表面的な課題は開発プロセスや分業体制、メンバーの意識、デザイナー不足などの問題が元あり、この問題を解決しなくてはまた同じようにリニューアルが必要な問題が発生すると考えました。
そこで表面的な課題をこなしつつも、この潜在的な課題に対処した方法としてエンジニアさんにも一緒にUIやインタラクションのデザインについて考えてもらうというアプローチを取りました。しかし2ヶ月半という短い期間のプロジェクトであったため、いきなり全員に向けて発信していくのではなく、まずは一人のエンジニアさんに対してアプローチをしていき、普段のエンジニアリングの時間をデザインに当ててもらうために、開発プロセスの改善なども行いました。
そしてプロジェクト終了後も、このひとつの成功事例から徐々に組織全体にもデザインに対する意識の変革が起こりました。
当日は、実際にこのスタートアップの方がイベントに参加されていたため、少し時間が経った今と当時の組織の変化について、生の声をお話して頂きました(突発に話を振ったにも関わらずありがとうございました)。

デザイナーとエンジニアの良い関係

河原 香奈子(Bracket リードデザイナー)

デザイナーとエンジニアのコミュニケーションが不足するという問題に対し、いきなり完成形を渡すのではなく、初期段階からお互いの意識を共有するためのアプローチについて紹介して頂きました。
STORES.jpに新しい機能を搭載する際など、POPFlintoなどを利用して制作途中の段階からプロトタイプを通して常に情報を共有することで、今やっていること段階とこれからやろうとする部分が明確になるため、他のメンバーから意見が出やすくなったそうです。また、このような形で途中の段階から共有していくとエンジニアさんはロジカルに考えるため、途中の段階でも自分では発見できなかった設計上の矛盾点に気づいてくれたり、未完成の状態から共有していくことにより、お互いが目指すべきものも共有できるようになり、最終的なアウトプット自体も良いものになる効果があったそうです。
また、日頃から河原さん自身が心掛けていることとして、仕事のやり方を固定せずにプロジェクトの性質や関わるエンジニアのタイプによって異なる手法を用いているように意識することや、日常的にエンジニアさんを観察することで、デザイナーとエンジニアがお互いに尊重し合って良いものづくりができるとおっしゃっていました。

「個」から「集」のデザインへ

木村 真理(株式会社nanapi デザイナー)

最後に木村さんより、自身が関わっているemosiの開発現場を例にお話を頂きました。
emosiのプロジェクトでは木村さんと二人のエンジニアの3人の体制ですが、従来の縦割りの分業のようにディレクターが要件定義をまとめ、デザイナーがUIやビジュアルデザイン、エンジニアが実装という体制ではなく、このチームでのデザイナーとしての役割は「たままたまデザインが一番得意なスタッフ」であるだけで、基本的にペーパープロトタイプやUI改善などは全員でやっているとのことでした。この開発体制の改善による効果として、エンジニアからも遠慮なくUIに対しての意見をもらうことができたり、UIの改善も分析から全員で行うようになるため必然的にアイデアの総数が増え、以前よりも良い開発ができるようになったそうです。
しかし、何をするにもチーム全体で確認していては時間がかかりすぎるため、重要な方向性をすりあわせた後の専門性の高い部分、例えばビジュアルデザインや実装だけは個々人に任せるようにすることで、開発スピードを保ちながらコミュニケーションコストを軽減しつつ、クオリティについても担保できるようになったそうです。


今回は同じデザイナーであっても、それぞれ立場の異なる人が関わる組織に対してどのように考えデザインしているかについて、非常に参考になるお話を聞くことができました。
少し抽象的な部分でもあるため、広義といってもデザイナーは一体なにをすればいいのかと疑問に思う人もいるかもしれませんが、今回のチームというテーマでは、プロダクトを作っていく過程でチームに問題があれば、チーム自体をデザインの対象としただけのことであり、良いサービスを提供したいという思いが前提にあります。この問題の対象がビジネスモデルかもしれませんし、インターフェイスかもしれませんし、グラフィックかもしれません。もちろんその対象をデザインする時に今までのナレッジを活かすことは良いことですが、時にはその領域に問題を感じたらデザインの対象と考えても良いと思います。
最後になりましたが、今回のイベントを主催してくれたnanapiの上谷さん、木村さんありがとうございました(また次回も期待しています)。

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