2016.8.16 / Business, Report, UX, リーンスタートアップ

受託型UXデザインの分解と構築

Tomohiro Suzuki

この記事は2016年8月6日に開催された”RIDE” UX Sketch SUMMER 2016にて、発表したスライドのフォローアップ記事になります。
STANDARDからはUXデザイナーの鈴木智大が「受託型UXデザインの分解と構築」というテーマで、受託としてのUXデザインへの関わり方の一部を発表させて頂きました。
内容としてはUXデザインのプロセス自体に、受託と事業会社に大きな違いはないと判断し、UXデザインが主体というよりも、主に関わり方や組織へのノウハウを定着させるための仕組みについてお話をしました。
当日は40分の発表時間に対し、90枚近くのスライドを用意してしまったため、説明不足の部分などについても記事内で補うことができればと考えております。

他の登壇者のスライドもアップされ次第更新されるそうですので、ConpassのイベントページをRIDE UX Sketchよりご確認ください。

受託側UXデザインの分解と構築 | "RIDE" UX Sketch SUMMER 2016 from Tomohiro Suzuki

UXデザインの会社Standardの紹介

STANDARDのストレングス・ファインダー

まずは最初にStandardの会社紹介をさせて頂きました。
上記はStandardのストレングス・ファインダーをまとめた結果で、個人の素質の上位5つをアンケートにより導き出されたものです。
色が濃いものほど、該当者が多い結果となっており、Standardでは特に収集心の素質を持つ人間が多いことがわかります。

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Standardは本を買いまくる会社

収集心の資質があるとおり、実際に会社の特徴として、非常に多くの本を購入しています。
Standardは5人のメンバーですが、今年は6月の時点で932冊程の書籍を購入していました(実際に読了している数はもう少し少ないです)。
せっかくですので、本記事内でもスライド作成の参考にしている書籍を紹介したいと思います。

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Standardの事業

Standardの主な事業の1つ目としては新規事業の立ち上げを支援させて頂くためのものです。
実際に2015年~2016年8月時点での計測で、40.6%が新規事業に関するご相談になります。

Standardの事業

2つ目としては既存事業の改善の支援で、主にWebサービスやアプリケーションの改善、リニューアル等の支援をさせて頂いております。
こちらはお問合せ頂く全体の36.4%に該当します。

受託のUXデザインのブラックボックスを開く

Standardの問合せの内訳

こちらは2015年~2016年8月時点での問合せに関する計測データです(受注のデータではありません)。
正確な数値は公開できませんが、数多くのお問い合わせを頂いており、デバイスとしては主にモバイル端末のアプリケーションに関する依頼を多く頂いています。

実は受託のビジネスモデルの性質上、お問い合わせ頂くことやその後の打ち合わせなどは、それ自体がUXデザインにおけるユーザー調査に該当する部分でもあります。
定量的な部分に関しては上記で公開している数値以外に、お問合せの性質やアクションなどを分類した、数十程度のより詳細な指標を追っています。
これらの指標により、SEO対策やブログの執筆、イベント登壇による効果の測定ができるようにしています。
定性的な部分に関してはヒアリング時のデータなどを元に構造化し、Standardの受託事業自体のペルソナの設計や、提供するソリューションに活用しています。
そのため、本資料で説明する内容はStandardの受託事業におけるユーザー調査を元に設計された内容となっております。

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UXデザインを行う際の関わり方のパターン

StandardのUXデザインプロジェクトでの関わり方のパターン

こちらは縦軸にユーザー、事業会社、Standardの3者が関わる際の構造のパターンを。
横軸には時間軸を考慮した案件の性質を示したマトリクスになります。
各パターンの詳しい構造、メリット・デメリットについては資料内に掲載していますが、主にこの8つのパターンが考えられます。
2社間構造ではそもそもユーザーとの接点がありませんのでUXデザインとは言えませんが、その他のパターンを状況に応じて使い分けているのが現状です。

StandardのミッションとUXデザインでの関わり方

Standardのミッションで、「未来の豊かさにつながる仕組みをデザインする」といった言葉を掲げています。
これは受託の性質上、いつかはプロジェクトから離れることを前提としたもので、Standardがプロジェクトから離れた後もユーザー中心の設計プロセスで、持続的な成長を続けられることを言語化したものです。
メンバーも少なく、生涯で関われる案件に限界もある以上、未来の豊かさにつながる仕組みを
デザインできる人を増やすことで、間接的に社会に貢献できるのではと考えております。
そのためクライアントワークでもノウハウを残す仕組みを積極的に導入しており、この後の内容に繋がってきます。

StandardでのUXデザインの関わり方

具体的には先ほど紹介した関わり方のパターンをいくつか組み合わせ、状況に応じた結びつきを伸縮させる構造でのプロジェクトを行っております。
例えばユーザー理解の少なく、チーム理解も少ないプロジェクト初期では結びつきを強くし、それぞれが分業できる際にはそのタスクに集中し広がる構造、またイシュー発生時などには密にコミュニケーションを行うようなスタイルになります。
また、時間軸としてはいずれStandardが離れることを前提に、プロジェクトのみではなく組織自体が自走できる状態をゴールとして考えています。

0.受託と事業会社のUXデザインに違いがあるのか

受託と事業会社の違い

そもそもの話になりますが、受託と事業会社のUXデザインのプロセス自体に大きな違いはないと考えています。
もし違いがあるとしたら、ビジネスモデルの違いによる事業の前提条件にあるのではないでしょうか。
具体的には上記のように、受託側のデザイナーはその性質上、プロジェクトへの理解が少なく、人間関係の構築もできていない段階から関わることとなります。
そのため、この前提を意識したプロジェクトへの関わり方が必要となります。

受託のUXデザインプロセスの前と後

具体的に言語化すると、このような形での関わり方になるかと思います。
そのため、本記事では実際のUXデザインプロセス自体ではなく、その前後に存在するプロダクトへの理解、チーム理解、ノウハウの定着の3点について主に紹介していきます。

1.UXデザインの前に素早くプロダクトの理解をする

ヒアリングでのリーンキャンバスの活用

受託ではその性質上、担当者が同じ業界の別サービスから依頼が来たとしても、秘密保持の契約上、受けられないケースがあります。
そのため、毎回別の業界のサービスを1から理解する必要がありますが、その理解のプロセスを効率化するためにリーンキャンバスを活用しています。
タイミングとしてはヒアリングの際などに実際に書く、またはリアルタイムで頭の中で整理をし、プロダクトの現状を把握できるようにしています。

これはすぐにUXデザインを行うのではなく、必要に応じた設計プロセスを設計するために実施しているものです。

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その際、似たようなツールとしてはリーンキャンバスの元となったビジネスモデルキャンバスや、最近ではナインセルなどもありますが、Standardでは一番馴染みのあるリーンキャンバスを使用しています。
それぞれのツールの対応表は上記のようになっており、状況によっては部分的に補うことでより正確に可視化ができるかもしれません。

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リーンキャンバスのマスの性質によるマーキング

具体的なリーンキャンバスの活用方法としては、ヒアリング時に実際の記入の順序に沿ってリーンキャンバスのマス目を埋めていきます。
その後、リーンキャンバスのマスの性質を、「検証済み」「仮説」「未記入」に分類し、仮説の場合には黄色でマーキング、書けていない場合には赤でマーキングします。

リーンキャンバス上のリスク

ここでリーンキャンバスのマスに色が付いている部分に着目することで、現状のプロダクトに対する仮説の状態と、リスクのある箇所を特定することができます。
もちろん検証方法を聞いただけでは正確に判断できないこともありますが、短時間でのヒアリングですので、精査するのはヒアリング後でも大丈夫です。

リーンキャンバスを活用したプロダクトのステージ判断

上記のリーンキャンバスのマス目の性質に注目することで、プロダクトの現在地(ステージ)をざっくりと判断することができます。
(補足:C-P-S FitはProblem Solution Fitと呼ぶことのほうが多いかもしれません)
最初は全てのマスが書けていないような状態からスタートし、仮説を書き込み、そこから検証と仮説の立案を繰り返し、理想的には色のついていないキャンバスになるはずです。

ステージの理解のためには下記の書籍が参考になるかと思います。
国内の書籍では見かけることのない、ARRRAモデルでのステージ判断や、リーンキャンバスでの顧客、課題、解決策、主要指標に該当するJavelinBoardのフレームワークなどについても解説されています。

リーンキャンバスタワーモデル

リーンキャンバスのマス目に書かれた仮説を検証していく時に重要なのが、各マス目の順番になります。
こちらはマスの性質を重要度ごとに置き換えたもので、勝手にリーンキャンバスタワーモデルと読んでいます。

リーンキャンバスタワーの土台になるものほど重要であり、タワーの上にある要素ほど、下の土台の影響を大きく受けることになります。
例えば一番上の収益モデルを単独で検証することはできず、そのためには下の土台となっている部分の検証が必要…といった具合に、簡単に優先順位を可視化したものです。
UXデザインを行うにしても、急いで解決策である理想の体験を設計してリリースして、結局そんな顧客はおらず、課題もなかったということを避けることにも繋がります。

また、左の主要指標については先に紹介したステージ判断と対応しており、ステージごとに検証する指標が異なるため、タワー本体とは分離しています。
例えば顧客と課題を検証するステージでバイラル係数を検証する必要はなく、顧客と課題の証明ができる指標を書くといった具合です。
そのため、主要指標自体の検証はなかなか難しく、しいて言うならその数値が極論として向上した際に正しくそのステージに応じたマス目が検証できているか…くらいかと思われます。

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リーンキャンバスタワーの右側にも、それぞれステージに応じて分離させたマス目を置いています。
こちらはタワーのどの位置に属するというよりも、それぞれのマス目の結びつきを向上させる役目であり、タワー本体のマスがブロックだとしたら、右側の要素はセメントのようなイメージを持ってもらうとわかりやすいかもしれません。
例えば収益モデルとコスト構造の間を埋めるために、既存事業での顧客を活用できるといった優位性や、顧客と課題を最も効率よく集めるためのチャネルなど、ステージや状況によって変化してくるという具合です。

ステージごとに応じたチャネルの検証方法には、トラクションに紹介されているブルズアイといったフレームワークがあるため、詳しくは下記を参照ください。

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また、Running Leanでは競合優位性はリーンキャンバスの記入の最後に回され、空白のままでも構わないと書かれています。
これは会社の戦略に大きく依存する部分であり、挑むべき市場によってリーンキャンバスの中でも優先順位が変わる部分でもありますし、特に客観的な判断が難しい部分でもあるかと思います。
おそらくRunning Leanでは、計画段階であまり競合優位性にこだわりすぎて先に進めなくなるよりも、実際に顧客開発を実施していく中で学びを活かして検討していくことを伝えたかったのではないかと思います。
完全な検証は難しいのですが、そのビジネスから「儲け」を生み出す9つの質問では企業戦略論の著者としても知られるバーニーが提唱しているVRIOを元にした強みの判断方法が紹介されています。

リーンキャンバスのステータス

上記のステージ判断の考え方とリーンキャンバスについて、鋭い人は気づいているかもしれませんが、実際にリーンキャンバスの全てのマス目が検証できたといって、ゴールを達成するわけではありません。
大切なのはただマス目の情報を検証するだけではなく、ビジネス的に成立するかどうかも検証していくことです。

上記は、よりマクロにリーンキャンバスの全体像を元に現在地を示すためのマトリクスで、プロダクトの健康状態を図るためのカルテのようなものです。
基本的に左下が学びもなくプロダクトも不調の最悪の健康状態で、右上に近づくほどプロダクトは健康な状態だと考えることができます。
リーンキャンバスの下のコスト構造と、収益モデルをベースにした損益を縦軸に、それ以外の情報を横軸に配置したようなイメージで、各マス目だけではなく全体像を捉えることができます。
もちろん最初から収益化を図る戦略を取らないケースもあるかと思いますので、その際は縦軸を別の指標(既存事業への貢献性、ユーザー確保の規模、エンゲージメントなど)に置き換えることで応用も可能です。

ここまでがヒアリングの際にシート上、または脳内で補完していることです。
また、実際にはヒアリングのタイミングだけではなく、プロジェクト全体を通じてプロダクトの状態を図るために使用しています。

2.UXデザインを行うためのチームの理解とチームビルディング

今まではプロダクト側の視点ですが、それだけでプロジェクトがうまくいくとは限りません。
実際にはそのプロダクトを世に出すための組織への視点が必要になります。

市場、プロダクト、組織の視点のミクロとマクロの図

こちらは市場、プロダクト、組織のそれぞれを関係性を示したものです。
よく語られるのはミクロな視点ではCPS-Fit(Customer Problem Solution Fit)、マクロな視点ではProduct Market Fitの2つがあります。
当然、市場に届けるためには媒介となるプロダクトが必要ですが、さらにプロダクトを作り出す組織側とのフィットも必要になるのではないでしょうか。

デンジャラス・ゾーン、ラーニングゾーン、セーフティゾーンの図

実際に市場に革新的なプロダクトを提供するためには、チームにも大きな挑戦が求められます。
既に存在しているプロダクトの焼き直しや、既に大きな成功を収めているサービスであれば別ですが、スタートアップでは例え成功確率が低くとも新しい挑戦を続けなくてはいけません。
また、プロダクトを改善するようなケースでは、少なからず今までのやり方自体も変更する必要があるでしょう。
例えば今までユーザーの視点がなかったため、UXデザインプロセスを学び導入することも新しい挑戦になるでしょう。

その際のチームの心理状態として、今までのやり方、つまりはセーフティゾーンから抜けだして、挑戦するためのラーニングゾーンに移動する必要があります。
ただし、ラーニングゾーンでは新しいことへの挑戦になるため、当然少なからず負担がかかり、負担が閾値を超えるとラーニングゾーンを飛び越してデンジャラスゾーンに以降してしまうことがあります。
また、挑戦や学びの際には失敗はつきものでもあるため、そこで気持ちが折れて、またセーフティゾーンに戻らないためにはどうするかを考える必要があります。

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人々にとって重要なものを作っている人々にとっても熱意を燃やせるほど重要か

ここで、改めて挑戦の意義を考えてると、「なぜ」その挑戦をする必要があるかが重要になります。
ラーニングゾーンで負担を感じると、ついつい今までの慣れた楽な居場所に戻りたくなるため、負担を軽くする、または負担を楽しく感じるような心理状態を保つ必要があります。
その際に重要となる視点の1つは、組織のミッションやビジョンなど、「なぜ」自分たちがここまで頑張る必要があるかを真に理解し、明文化することです。
この時、トップダウンで決めるのも効率としてはいいのですが、戦略と実行が分かれている組織の場合には、現場への浸透と実行力、当事者意識を持ってもらうためにボトムアップ型のアプローチの方が有効になります。

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ビジョンソリューションフィットとプロダクトオーガニゼーションフィット

上記はプロダクトと市場の視点に加え、組織とプロダクトのフィットする視点について整理した図になります。
まずCPS Fitと並び、初期段階では組織としてのビジョンとプロダクトの提供するソリューションについても考えるVision Solution Fitが大切になるのではないでしょうか(※ こちらの名称は仮ですので、詳しい人がいましたら、ぜひ議論させてください)。
つまりは、自分たちが挑戦する価値がある程のソリューションであるか、またはスタートアップであればファウンダーの自分がワクワクできるかなどの視点です。
財務的な視点ももちろん大切なのですが、それだけでは変化の大きい市場での挑戦では1回の失敗でモチベーションや士気が下がりやすく、次の学習に繋がらないことが多くあるため、そこから学びに繋げるための体制がまず必要です。
詳しくはスライド内で紹介していますが、Standardでは組織やメンバーの状態を把握するために、UXデザインの手技法の対象をユーザーからクライアントに変更し活用しています。具体的にはメンバーに対するインタビューやステークホルダーマップによる理解・構造化や、実際にStandard内で実施した経験を元にミッションやビジョンをWS形式で設計していくといった活動をしています。

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次にProduct Market Fitと対になり、Product Organization Fitが必要になります(※ こちらの名称も仮ですので、詳しい人がいましたら、ぜひ議論させてください)。
スタートアップでの成長痛として、先にProduct Market Fitを達成すると、その後に一気に組織側の体制を整える必要があり、本当に成長が必要な時に停滞が見られるようなことがあるのではないでしょうか。
特に急成長を目指す時ほど起こりがちで、組織側の視点として人数×効率の公式で考えると、リソース不足だけを問題と捉えて人数を増やすことのみで体制を整えようとすると、内部では逆に混乱が起きることがあります。
その際に、やみくもに人数を増やすのではなく、今の業務での効率を上げることやプロセスや各種の連携を見直し最適化する。これから人数が増えた際のコミュニケーションのために再度ミッションやビジョンを浸透させたりといった活動が必要になります。

ただしスタートアップなどでは資金調達のためにProduct Market Fitを証明するなどの活動も必要になるケースがあるため、Product Organization Fitとはどちらが先かというより、同時に行いすぎてカオスになるのではなく、どちらに集中するのかを選択する必要があるでしょう。

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24_タックマンモデルとチームワークの7段階モデル

その際にチームワークの状態を示すものとして有名なのがタックマンモデルで、形成、混乱、統一の状態を経て、機能するまでの状態を示したものがあります。
しかし、これだけでは少し抽象的すぎるため、チームワークの7段階モデルと組み合わせるとわかりやすいでしょう。

先ほどの急成長の成長痛としては、早すぎる成功により、このモデルで言うところの統一期、または共通のものを持つ前後の段階で、急速に人数だけが増えることで発生することがあります。
タックマンモデルは一見、時間軸の通りに進むように見えますが、規模の拡大により新規のメンバーが増えれば増えるほど、全体としてはチームワークの良い部分も標準化されるため、全体として見ると混乱期に戻ることもあることを考慮し、急成長の際には対処方法を考える必要があるでしょう。

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3.UXデザインのノウハウを組織に定着させる

最後に受託としてUXデザインを行うだけではなく、より持続可能な成長を行うために組織にノウハウを残すための活動を紹介します。
受託としてはこのノウハウを提供しない方が案件としては継続しやすく、ビジネス的には良いように思えるのですが、長期間の継続や出向では受託でのメリットでもある、複数案件の経験が難しくなり、外部からの視点が失われたりといったデメリットもあります。
そのためには、案件中だけではなく案件後を見越し、クライアントの組織にノウハウを提供し自走できるチームを作る必要があります。
これが冒頭でご紹介したStandardのミッションに繋がる部分でもあります。

学習のモデル

こちらは新しいことへの挑戦や、新しい学びを行う際のモデルで、徐々に抽象的な状態から具体的な理解へ、そして再度抽象化できるような理解へと。
そして、外部に存在している情報を徐々に自分に取り入れ、自分で使いこなせる内的な情報へと推移させる必要があります。
このプロセスを抜きにして、いきなり実践したり理解したつもりになっても、結局は定着せず、また1度の失敗で挫折するといったことになりがちです、

ラーニングピラミッド

具体的な方法としては、UXデザインのノウハウを提供する際によく行われるのは講義や、課題図書の設定だったりとありますが、ラーニングピラミッドで考えると定着率は高くありません。
百聞は一見にしかずというように、講義や読書も大切なのですが実際に体験する、それも汎用的な設定ではなく、より自分ごととして捉えるために実際のプロジェクトを元に行うことでより効果の高い学習を行うことができます。
具体的にはStandardではプロジェクト内の各プロセスをワークショップ形式の共創プロセスで実施し、ただ成果物を提供するだけではなく、それを設計するプロセスからメンバーを巻き込み、
また、理想としてはワークショップだけではなく真の理解をしてもらうために、組織の他のチームやメンバーなどに説明できるレベルの理解になるまでを目指しています。
そのためにはワークショップを使い回すのではなく、前述したプロダクトと組織の両方の理解をした上で、理解のしやすい形にカスタマイズした上での提供を行っています。
まだ試行錯誤しながら実践中ではありますが、これが案件後も自走し、継続的にユーザーに価値を提供できるチームへの支援になるのではと考えています。

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ジョハリの窓

また、ワークショップ形式でのプロジェクトでは他のメンバーも関わりやすいため、コミュニケーションの面でも前提の理解を助け、その後の実行や自主的な提案が出やすいといったメリットもあります。
ジョハリの窓で考えると、自分が知らない情報を得る、そして自分が知っている情報を他人に提供することにより、自己開示と他者の理解が進み、組織としての成熟も高まります。
特に創業期やプロジェクトの初期であればこそ、遠回りなれどプロダクトへの深い関わりと理解をすることで、その後のメンバーへの意思伝達への効率化などに繋がるでしょう。

その他の小技

その他、ノウハウを定着させるための小技としてコミュニケーションの視点では、イベント中に何人かの登壇者が言っていたように「UXという言葉自体を使わない」ということや、「Slackでのペルソナbot」の導入などがあります。
UXデザインのノウハウを提供するのにUXと言わないのは奇妙なように思えるかもしれませんが、実際にUXデザインの解釈は組織によって異なるため、敢えて使わない方がコミュニケーションとしてはスムーズにいきます。
それよりも、前述したようにクライアントに対してのインタビューなどを通じて、マーケティングの言葉だったりエンジニアリングの言葉など、より理解しやすい形に変換して伝えることで、認識の齟齬が発生することを防ぐことができます。

問題提起の視点としては、アサイン初日からでもできるようなユーザビリティテストや、ペルソナを自由に書いた上でどれだけ認識が違うかなど、現状のプロダクトや組織内での理解度を可視化することで、共通の問題意識を持つことができます。

まとめ

受託の戦略モデル

長くなりましたが、以上がざっくりとしたStandardで行っている受託でのデザインの活動になります。
上記は受託でのビジネスでの階層ですが、ここまでに紹介した内容の目的としては、一番上の市場に該当するエンドユーザーにとって価値のあるサービスを持続的に提供する仕組みを考えるためのものです。
その際のプロダクトの設計プロセスの一部としてUXデザインがありますが、それだけではなく、自社も含めた全体的な視点でデザインする必要があります。
スライド内の最後に少しだけ紹介していますが、実際に現在のようなプロジェクト形式になる前には、Standard自体を変革するためのプロセスをワークショップを通じて設計を行っていました。
具体的にはミッションやビジョンの設計から、社内での問題解決、顧客や課題、ソリューションの仮説検証などを、案件の合間や合宿を通じて実施していました。

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そのための情報の理解や整理にUXデザインの手技法の主語を、自分たちのチームに置き換えて活用しています。
このUXデザインの手技法の応用は、イベントの最後の登壇だったこともあり、RIDE UX SKETCHのイベント中にも実施していました。
実際には発表の直前の会場入りで良かったのですが、他の登壇者の発表や参加者の反応の観察、休憩中の簡易的なインタビューを通じて、資料のカスタマイズや、発表の際の言葉遣いを調整させて頂きました。

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メッセージ

そして、大切なのはこれまでに紹介したようなプロセスを全てやろうとせず、自分たちの組織の状態や性質などの前提の違いを理解することです。
こんな1万文字以上もある長文の内容を一方的に伝えれば、本当に興味のある人以外は拒否反応を示して逆効果です(この記事は意識高い人向けに書いてます)。
また、新しいことへの挑戦を促すこと自体が挑戦ですので、自分以外の人に伝える前には一度立ち止まり、「なぜやる必要があるのか」をまずは自分の中に落とし込みましょう。

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以上、長くなりましたがRIDE UX Skethcのフォローアップの記事となります。
Standardではイベントだけではなく、社内向けの勉強会やワークショップへの支援、専門的な内容に対する研究開発を行っております。
もう少しライトな内容としては、事業アイデアの壁打ちなどもやっていますので、より詳細についてご興味があればお気軽にご相談ください。

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