2014.7.31 / Report

UX TOKYO Jam 2014参加レポート

Tomohiro Suzuki

7月26日(土)に開催されたUX Tokyo Jam 2014に参加してきました。
120名参加枠がありましたがすぐに売り切れになったこのイベントは昼から夜まで行なわれ、パラレルセッションという同時間に2つのセッションを平行して開催する珍しい取り組みもありました。
弊社からはそれぞれ二人の鈴木が参加し、全てのセッションを体験することができたため、イベントレポートとして簡潔にではありますが記述したいと思います。
(ブログ内の写真は山本郁也さんより提供頂いたものです。)

オープニングキーノート

前田 俊幸(UX Tokyo)

UX Tokyoのコミュニティの最近の動向と、本イベントの内容の紹介、今後のUXデザインの設計対象のシフトについてのお話を頂きました。
デジタルシフトとパワーシフトについての動向は前田さん自身のボクシングの経験から、現在は「上半身のボクシング」と例え、サービスとの単一の接点のみで関わっているが、今後は複数の接点と組織全体でデザインをするような「足、腰の入ったボクシング」に変化する。
また、本イベントのテーマとして「UX 0,1,100」というものがあり、それぞれ以下のような形でUXを分解しているものが今回のイベントのそれぞれのセッションの構成にもなっているとのことでした。

  • UX0:哲学、ビジョン「社会をどうしたらいいのか!?」
  • UX0 → 1:オリジナリティ「価値を想像するには?」
  • UX1 → 100:スケーラビリティ「より大きなインパクトを生むには!?」

A-1:Empathy in UXD

村越 悟 @future79(グリー株式会社 UXデザイナー)
水野 太 @ftomiz(UXデザイナー / インフォメーションアーキテクト)
モデレーター:坂田 一倫 @mariosakata(株式会社コンセント ユーザーエクスペリエンスアーキテクト)

事業会社とデザインエージェンシーを経験している3人により、「共感(Empathy)」というキーワードを元に語られたセッションです。まず、クライアントワークという視点ではプロジェクトメンバーの共感を集めることが必要になります。しかし、大規模プロジェクトになるほど関わる人数も多くなり、それぞれのバックグラウンドも異なるため、まずは共感のための環境作りを目指します。またプロジェクトでは当初の予定通りに進まないことを前提として考えると、変化したとしても進むべき方向を見失わないための指針(コンパス)を持っておくことで、例えプロジェクト内容が少しずつ変化していったとしても、メンバーが向かうべき方向は明確にすることができます。
次に自社の組織という視点で見ると、UXDは事業戦略の部分から設計されるべきであるとデザイナーが啓蒙していたとしても、現実ではなかなか難しいものです。これを突破するためには、まずそれぞれの立場の異なる人への共通言語に基づいて伝えることが必要になります。例えば共感しやすいのであればUIを起点にしたUXという言葉で伝えるなど、変化に対応できる組織を作る為にはデザイナー自身が「変化適応力」を持つことが重要です。

B-1:UXデザインのためのマテリアリズム

江口晋太郎@eshintaro(編集者/ジャーナリスト)
山本郁也@fumya(BEENOS 戦略ディレクター)

マテリアリズムという唯物論をキーワードとして、UXについて考える時にどんな体験をユーザーに与えるのかをWebという狭い視点のみで考えてしまっていることを考え直すきっかけを与えるという内容でした。そもそも体験を与えるために必要なのは紙でも良いし、そもそも物を介すること自体が唯一の方法ではないため最初から手段を限定して考える必要はありません。
たとえ今Webデザイナーの人は今はWebでしか表現できない…と諦めるのではなく、今後何が必要なのかを考え続けることが重要です。その中でひとつ興味深かった内容として「ググれカス」という言葉についての言及がありました。現在のGoogleで検索をすればどんな情報にでも辿り着けるという盲信がありますが、その結果が「UI/UX」という言葉に繋がると考えられます。このような表面的な検索力ではなく探索力を鍛え、自分が本当に知る必要のある情報の本質を突き止めることが必要なのではないでしょうか。それはGoogleを使うことだけではなく、例えば大工などの全く異なる仕事にも活用することができるでしょうし、特に多くの分野に関わるデザイナーにとっては検索ではなく自ら探索できる力が必要だと考えられます。

A-2:Experience Design Out of Screen:これからのエクスペリンスデザイナーの生きる道

児玉 哲彦 @akhkkdm(株式会社アトモスデザイン代表/デザイナー)

多くのものがスマート化しデザインの対象となってくる中で、それぞれのUIは対象物ごとに変化するものですが、ユーザー体験という視点においてはデバイスの特性により制限はありつつも、UIよりは共通に考えることができます。特に多くのデバイス間での連携がシームレスに可能になりつつある中では、それぞれのタッチポイントと体験をまたいだサービス設計を考えることが今後ますます求められます。また利用するユーザーの環境のどこにでもデバイスが関わるようになってきており、例えばGoogle Grassでは一部の店舗では既に禁止されるということもでてきていますが、変化するデバイスに合わせてユーザーの身の回りの環境を考慮したデザインを行う必要があります。

ライトニングトーク:村越さん

2045年には全人類の能力をコンピュータが超えることになる技術的特異点の年があります。現在でもウェアラブルや脳波インターフェイスなど、コンピュータはどんどん私達の体に近い部分に存在し、攻殻機動隊のような未来が本当に実現するのかもしれません。このように人間とコンピュータの境界線が曖昧になる未来では、UXデザイナーはユーザーではなく人間そのものを理解し、変化した人間と社会をデザインするようになるのではないだろうかと予測されていました。

ライトニングトーク:坂田さん

村越さんと同じく2045年という年をキーポイントとして、デジタルは生活の中に密接に関係するようになります。その中で私達デザイナーは現在と全く異なるバックグラウンドを持った人を対象にデザインすることになるでしょう。現代でもデジタルネイティブの子供をあやす為にYouTubeを使うことがありますが、これでは親とのコミュニケーションができない子供が増えるなど、問題を解決するために生まれたデザインによって新たな問題が生まれるのかもしれません。そしてロボットが人間を超える技術的特異点を考えると、常にデザイナーという職種が無くなる危機感を持ち、「人間からの反撃」として今と今後に何を残すのかを考え続けることが必要でしょう。

B-2:UX StudyとしてのFeasibility Study

新明 智 @satoshimmyo(株式会社ココナラ 取締役)

新規事業を立ち上げるにあたり、実現可能性の視点でビジネス価値とUXの価値のフィージビリティ・スタディをデザイナーがおこなっていく必要があります。UXデザインをサービスデザイン、アクティビティデザイン、インタラクションデザインに分類し、それぞれサービスデザインを事業のフィージビリティ・スタディ、アクティビティデザインとインタラクションデザインをUXのフィージビリティスタディとしてココナラのデザインに取り組みました。
難しかった点としては買い手であるバイヤーと、売り手であるセラーのそれぞれに与える体験と価値が異なるということもありましたが、アンケートを元にしたプロトペルソナにインタビューを行うなどの方法で徐々に価値をクリアにしていきました。
そこからアクティビティデザインを行っていきましたが、予期的UXのコントロールが最も重要だと感じ、「ユーザーはなぜこのサイトに出品したいか?」というセルフゴールを予期的UXの仮説としつつ、インタラクションデザインをセラーに寄せるなどの方法で設計を行いました。
まだまだUX Studyに関する情報は少なく事例は溜まっていないのが現状ですが、本当に自分たちが知りたいことはなにか?の仮説を持って、手法を自分たちで考えてまわしていくことが必要です。

A-3:UXから「生きたUX」へ ー 論から「実践UX」へSHIFTしよう

大隈 広郷(デザイン思考研究所☆FUTURES PLACE 代表)

HX Prototypeという、ヒューマンエクスペリエンスとプロトタイプを組み合わせ、簡単な試しと失敗を体験できるワークショップが行われました。内容としては「セブンイレブンのロゴを書き出す」「来年UX Tokyoで発信したいこと」という二つの課題をそれぞれのチームごとに別れて行われ、来年のUX Tokyoについては最後にチームごとにまとまったアイデアを坂田さんにプレゼンをしました。(以後、他のチームの動向はわからないので私のチームについての主観で記述します)
セブンイレブンのロゴでは、なぜかセブンイレブンホールディングスのロゴを書いてしまい、普段あれだけ見ているロゴでも全然描けないものだと実感しました。実際に7という部分以外はチーム内でもいろいろな意見があり、正解を見てようやく気づいた部分などの発見がありました(ELEVEnの「n」が小文字だった等)。
来年のUX Tokyoで発信したいことでは、最終的に私達のグループでは「オープニングキーノートをロボットが行う」というものでした。このセッションの前の児玉さんの内容と少し繋がるものでもありますが、デザイナーがロボットに負けないように力を身につけるための問題提起という意味で面白いのではないかと思います。実際のプロセスとしては個人個人がアイデアを付箋に書いていき、それを分類して繋げることで最終的にひとつに収束させるというものでした。5人のチームでしたが、それぞれのアイデアは様々な視点から考えられており、最初はこれが本当にまとまるのか疑問でしたが、チーム内で強力することでひとつのアイデアとしてアウトプットできたのは貴重な体験でした。

UX戦略を考えるための本質的ユーザー理解

井登 友一 @naadam(株式会社インフォバーン 取締役 京都支社長)

コンテンツのマーケティングとは、ユーザーを惹きつける継続的かつ長期的に付加価値の高いコンテンツを提供するのが役割ですが、このコンテンツとはなんなのでしょうか。それは「おもしろい」「情報に富む」「他には無い」という条件が満たされるものであり、そのためにはコンテンツの受け手にとっての最良の経験を理解し提供することが必要です。受けてであるユーザーとはあなたにとって最も大切な人であり、顔の見えるそのたった一人にフォーカスする方法がペルソナです。ペルソナの品質をチェックするためには下記の項目によりチェックすることができます。

  • 何のためのペルソナか?が明確になっているか?(新規事業のためなのか?既存サイトのためなのか?)
  • 適切な手法と手順を経た調査をもとにつくられているか?
  • 人物像をデータやスペックではなく、活き活きとした生身の人間のストーリーとして描けているか?
  • 感情移入ができるか?他者に感情を込めて他己紹介できるか?(そこに書いていないことも感情移入してできるか)
  • 出来上がったペルソナは、自社の製品やサービスの改良、顧客とのコミュニケーションを発想する手助けになるか?

しかし、人間は自分がしたいことを言葉にできることは5%ほどしかないため、ユーザーの意識と無意識を見極めることが重要です。そのためには観察法やコンテクスチュアル・インクワイアリー、コラージュ法などを使うことができます。大切なのは本質的なユーザー理解をすることです。

クロージングキーノート

長谷川 敦士 @ahaseg(株式会社コンセント 代表/インフォメーションアーキテクト)

まず「UI/UX」という表記は誤りであり、「UX」を結果として捉えた場合、その結果に辿り着くまでの手段が「UI」であると言えます。飛行機に乗ってどこかに行くことを考えると、まず空港に辿り着くまでの券を駅で買うことがありますが、成田エクスプレス用の券売機には使い方の張り紙がされていることがあります。この場合には目的地に辿り着くことが目的であり、券売機というのは目的地に辿り着く為の手段の中の一つでしかありません。UIだけを見ると券売機にされている張り紙が目につくかもしれませんが、それは大事の前の小事であり、そもそも券売機が必要なのかという所を考える必要があります。もし荷物が30分で届くのなら、UIがどんなにひどくてもそのサービスには価値があります(参考:amazon Prime Air)。
また、企業の重要視する基準が1900年代頃から比べ「製造→流通→情報→顧客」とシフトし、現在では顧客を重視する時代と言われています。従来の顧客へ提供されるのは「もの」自体というグッズ・ドミナント・ロジックから、顧客に提供されるものはすべて「サービス」であり、「もの」は構成要素のひとつサービス・ドミナント・ロジックに変化しています。米amazonのインタビュー記事では「キンドル・ファイアがただのデバイスではなく、サービスだからです。」とCEOが認識して語っています。このような変化の中で、組織の中にもUXデザインは従来の事業戦略と別物という考えから、事業戦略とUXデザインが共存するものだと考えに変わってきています。
UXは手段ではなく結果であり、UXはビジネスそのものであると言えます。これからはUXデザイナーが未来を作ることになるでしょう。

まとめ

懇親会までを合わせると8時間近くになる長時間のイベントでしたが、様々な視点からの考え方に触れることができました。実際にワークショップとして実践するものから、プロセスや実例紹介、デザイナー自身への問題提起としているセッションなどさまざまな方法で刺激を与えられることは、書籍やブログなどを読んでいては体験できないイベントならではの価値かもしれません。また来年も開催される(?)とのことですので、興味がある人は是非参加してみてはいかがでしょうか。おそらく自分や社内だけでは得られない、様々な視点からのデザインに触れるきっかけになると思います。

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